モリモリとご飯を食べ、水を飲み、静かに眠る。
そのおかげで、チビの体重は3.3kgまで増えた。
以前はジッとしていることが多かったが、今は走ったり、同居猫にちょっかいをかけたり、壁紙を剥がしたり。
以前の生活が戻ってきた。 体も少しふっくらした。
だが、油断はできない。
リンパ腫は、治療によってがん細胞を完全になくす「完治」ではなく、がんを小さくして症状が落ち着いた「寛解」の状態を目指すことが多い。
放射線治療や化学療法で、できるだけ長く寛解を維持する。 それが治療の目標だ。
抗がん剤が効いて、元気になったチビ。
治療はつらい。 それでも、きっと寛解にもっていける。
大丈夫だ。きっとうまくいく。
そして、3回目の抗がん剤治療の日。
ここで、チビに変化があった。
いつもなら注射をする時、暴れる。
だが今回は、針を刺す瞬間も彼女は動かなかった。
ジッと我慢していた。
賢い彼女は、暴れても注射されること、ジッとしていればすぐに終わることに気付いたのだろう。
「おとなしいねー。可愛いねー」
チビを保定しながら、看護師さんが言った。
動物を怖がらせないよう、落ち着かせるために優しく声を掛けることがあると聞く。
きっと看護師さんにとっては、いつもの声掛けだったのだろう。
けれど、その言葉を聞いて私はふと気付いた。
チビに最後に「可愛い」と言ったのは、いつだっただろう。
最近は、 「頑張って」 「苦しいよね、しんどいね」 「ご飯、少しだけでも食べて」 そんな声掛けばかりだった。
いつの間にか、私の中でチビは「病気になった可哀想なチビ」になっていた。
目の前にかかっていた「可哀想」フィルターを外して、改めてチビを見る。
可愛い、可愛いキジ白のチビちゃん。
賢くて、頑張り屋のチビちゃん。
「病気の可哀想な子」じゃない。 それだけじゃない。
「……えらいね。いい子だね」
久しぶりに、「可愛い」という気持ちでチビの頭を撫でた。
目の前にいるのは、私の愛猫だ。
ウルトラスーパー可愛い、大好きなチビちゃんだ。
家に帰ったら、たくさん褒めよう。 たくさん「可愛い」と言おう。
まずは今日の治療が、無事に終わりますように。
そう祈った。
血液検査では、WBC(白血球数)が9.90まで回復していた。 前回は基準値ギリギリの3.17だったので、ひとまず安心した。
3回目の抗がん剤は、ビンクリスチンを投与した。 1回目と同じ薬だ。
薬は抗生剤とステロイドが処方された。
費用は13,847円。
万札が簡単に飛んでいく。
この時は、ペット保険に入っていればよかったな、と少し後悔した。

