3回目の抗ガン剤治療から2日後。
朝、ズーズーという音で目が覚めた。
キャットタワーにいるチビの方を見ると、右目から涙が出ていた。 治まっていた症状が、また出始めていた。
抗ガン剤は1週間ほど間を空けないと体に負担がかかるらしく、次の診察までヤキモキしながら待った。
今回も血液検査はクリア。
4回目の抗ガン剤は、ドキソルビシンだ。
強めの薬で、点滴で時間をかけて体に入れていく。 副作用として腎臓に負担がかかることを説明された。 そのため、抗ガン剤の投与とあわせて点滴で水分補給もするそうだ。
午前中にチビを預けて、午後6時以降に迎えに来るよう言われた。
「では、お預かりしますね」
看護師さんが、チビを病院用のキャリーバッグへ移す。 いつもと違う雰囲気を察したのか、チビは体を小さく丸めていた。
できれば傍にいてあげたい。 けれど、私がここにいても何もしてあげられない。
「また迎えにくるからね」
声をかけることしかできないのが、もどかしい。 後ろ髪を引かれる思いで病院を後にした。
チビと長時間離れるのは、CT検査をしたとき以来だろうか。
時間が過ぎるのが遅すぎる。 早く時間が経ってくれ、と部屋の中を行ったり来たりした。
怖がりなあの子は、今頃ひとりで恐怖と痛みに耐えているのだろうか。
そう想像するとなんとも落ち着かず、結局、午後5時には病院に着いてしまった。
受付を済ませ、まだかまだかとチビを待つ。
先生に連れられてきたチビは、少し疲れた顔をしていた。
こちらに気付くと、
「ニャー!」
と、大きな声で鳴いた。
よくも置いていったな、と絶対に文句を言っている。
「チビちゃん、暴れたりせずいい子でしたよ」
その言葉に、思わずニヤリとしてしまう。
どうです、うちの子。世界一賢いでしょう?
そう自慢したいのをこらえて、診察台の上で怒っているチビの頭を撫でた。
「頑張ったね。帰ろうね」
いつものキャリーバッグを開けると、チビは一目散に飛び込んできた。
お家へ帰ろう。 美味しいもの食べようね。
今回の費用は18,426円。 預かりの費用もかかり、いつもより少し高めだった。
ところが、財布の中には15,000円少々しか入っていない。
しまった。
チビを迎えに行くことばかり考えていて、そこまで気が回っていなかった。 クレジットカードが使えて、なんとか助かった。
家に着くと、チビは少しご飯を食べたあと、すぐにお気に入りのクローゼットへ直行した。
病院ではずっと気を張っていて、疲れたのだろう。 安心したように、ぐっすり眠っていた。
まだ鼻水や鼻詰まりは続いている。
明日には薬が効いて、少しでも楽になっていますように。 副作用が出ませんように。
クローゼットで眠るチビを見ながら、そう願った。

