愛猫チビのリンパ腫闘病記⑩〜猫が薬を飲まない!投薬バトルと『君と喋れたらいいのに』〜

猫とガン

投薬バトル、開幕。

まずはいつものように、錠剤カッターでディアバスターとフラジールを8等分にし、ちゅーるに混ぜ込んだ。

一口、二口。

気付く様子もなく、ぺろりと平らげた。

1日目の朝は、飼い主の勝利。

この調子なら楽に終わるだろうと、私は余裕をかましていた。

しかし、我が家で一番賢いと言われるチビ。

さすがに一筋縄ではいかなかった。

その日の晩。朝と同じように薬をちゅーるに混ぜ、器をチビの前に置いた。

すると、フンフンと匂いを嗅いだあと、こちらを見上げてきた。

その表情は、なんとも胡乱げだ。

――お前、オヤツに何か混ぜてるだろう。

そう言わんばかりの顔だった。

バレたか?

気付かないふりをして、 「食べないの?ほれほれ美味しいよー」 と指にちゅーるを付け、口元へ持っていった。

チビは指先の匂いを嗅ぐと、プイッと顔を背けた。

ダメだ。 完全にバレている。

さすが天才猫ちゃん。

頭を抱える飼い主をよそに「もう興味ありません」とばかりに別室へ向かおうとするチビ。

私は慌てて、器のちゅーるに鰹節を振りかけた。

その匂いに釣られ、チビが振り返る。

「どうぞ」そう言って、再び器を目の前に置いた。

チビは鼻を近付け、フンフンと慎重に吟味している。

――頼む、食べてくれ。

心の中で祈った。

少し間を置いて、チビが口を付けた。

成功した――と思ったのも束の間。

半分ほど残されてしまった。

仕方ない。 少しでも薬を飲んでくれただけでもありがたい。

残りはまた明日頑張ろう。

他の猫たちが「ちょーだい!」と騒いでいたが、薬入りをあげるわけにはいかない。

勿体ないと思いながら、残ったちゅーるを捨てた。

二日目の朝。作戦を変えることにした。

昨日は一度に混ぜる薬の量が多かった。

だから気付かれたのかもしれない。

ならばちゅーる1本に対し、混ぜる薬の量を半分にした。

匂いを誤魔化すために鰹節も添えて。

これを2回に分けて食べてもらう作戦だ。

1回目は、うまくいった。

だが2回目。

「今は食べる気分じゃない」そう言わんばかりに、見向きもされなかった。

チビはもともと食の細い子だ。加えて鼻が詰まって食欲も落ちている。

またしても失敗だった。

隠そうとするからいけないのでは?

いっそ堂々とあげればいいのかもしれない。

そう思い、その日の夜はカリカリの中に薬を忍ばせてみた。

結果は、火を見るより明らかだった。

3日目。

薬が少しは効いているのか、下痢はマシになっていた。

けれど、まだ治りきってはいない。

ネットや動画で、薬を直接口に入れて飲ませる方法を調べ、実践してみた。

けれど、どうにもうまくいかない。

洗濯ネットやタオルで固定しようとするが、スルリとうまく逃げ出してしまう。

洗濯ネットやタオルで固定しようとするが、スルリとうまく逃げ出してしまう。

運よく固定できても、うまく口を開けることが出来ない。

四苦八苦しながら何度か繰り返すうちに、チビは私を見る目に怯えを滲ませるようになった。

少し近付いただけで体を竦ませ、手の届かないクローゼットの奥へ逃げていく。

ーー心が折れそうだった。

チビのためにしていることが、チビのストレスになっている。

君のためなんだ。飲めば体が楽になるんだよ。

そう言いたいのに、どうしても伝わらない。

こんな時だけは本当に思う。

猫の言葉が喋れたらいいのに。

物陰の奥からジッとこちらの様子を伺う視線に、途方に暮れた。

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