チビの余命を宣告されてから、私は泣いた。
泣いて、眠って、また泣いて。それを一日中繰り返した。
ずっと「どうして」を繰り返した。
なにかに当たり散らしたかった。
猫たちと犬の世話だけは、なんとかこなした。
私は風呂にも入らず、ただ布団のうえで泣きながらチビに「ごめん」と謝り続けた。
もっと早く病気に気付いて早々に治療を始めていれば、余命宣告されなかったかもしれない。
自分の愚かさに腹が立った。
そうして干からびるまで泣いていた3日後、飼い犬が体調を崩した。
まだ生後6ヶ月の柴犬。なにかあっては大変なのですぐかかりつけである近所の病院に連れて行った。
元々チビを連れて行っていた所だ。
診察の結果、様子見でも大丈夫とのことだった。
良かった。この子は大丈夫だった。
安堵のため息をついた、その時。
もしかしたら、先生なら。
そう思った。
「先生、チビ、悪性リンパ腫でした」
先生が「えっ」と目を見開いた。
「リンパ腫になったらどんな事をすればいいですか?」
この時は、どんな情報でも欲しかった。 獣医師なら、何か別の選択肢を知っているのではないか。 そんな期待があった。
しかし、先生から返ってきた答えに頭が真っ白になった。
「どんな治療をしても、行き着く先は一緒だから、僕なら治療しないな」
初めは理解出来なかった。
何度も反芻して、先生が言わんとした意味が少しずつ脳に染み込んだ。
言葉が出なかった。
先生は冷たく突き放したかったわけではない。 猫の負担や治療費、そして飼い主の生活まで考えたうえで、自分ならそうするという考えを話してくれたのだと思う。
でも私には「チビを見殺しにしろ」と聞こえてしまった。
なぜ。
なぜ。
なぜ?
二の句を継げない私に先生は続ける。
「鼻腔内なら放射線治療がいい。でも設備のある病院は隣県にしかない。片道2時間45分かかる。通える?治療費も高額だよ」
先生は現実的な話をしている。
確かに長時間の車移動は人にも猫にも負担がかかる。
正論だ。
だから治療を諦めて、自然死させてあげたほうがいいのではないか。
その時、
「私が、チビとまだ一緒にいたいんだよ!」
私のエゴが心の奥で叫んだ。
…そうだ。私はチビと暮らしたい。
チビはどうか分からない。
もしかしたら苦しい治療をこの先ずっと続ける方が嫌かもしれない。
でも。
ごめん。これは私のワガママだ。
まだ君と別れる準備ができてないんだ。
もう少し、あと少しでいい。
…いや、やっぱりたくさん。
君と一緒に暮らしたいんだ。
決めた。
泣くのも落ち込むのもやめよう。
いつか来る、チビが虹の橋を渡るその瞬間まで。
私は足掻いてやる。
まずはガンについて知ろう。
私は今から立ち向かう敵のことを知らなさすぎる。
家に帰ると、真っ先にパソコンを立ち上げた。
